前見建築計画|Columnで「複雑系」と一致するもの

1145.選べること、住むほど価値が生まれることが大事

maemi fuminori [Date 2021-4-23]

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始まったと思いきや、新築住宅への適合義務化で概ね一致と・・・運用前になにも議論してなかったという感じでしょう。
新築住宅への太陽光発電パネル設置義務化まで飛び出したようで、環境ビジネスとしてのインパクトは大きいことから、特定利権への忖度が伺い知れます。
※ESG投資を指す。

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当事務所では、住宅着工数が年々減少傾向でもあるので改正法運用の経過観察も含め、小規模住宅は「説明義務」止まりとして、施主に選択可能性を残しておくのが望ましいという立場ですが、記事にあるように、規模に応じて段階的に規制していくのはありではないかとは思います。

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一方、太陽光発電パネルについては気象、景観及び室内気候を考慮した屋根デザインに注力する私たち建築家はじめ、SDG'sを尊重する建築家協会や建築学会等がどのような見解を持つのかも気になるところです。見上げたらパネルが美観を壊す。それは美しい街並み形成に逆行しますから工夫が必要。
蓄電池ユニットをご所望の方であればメリットは大きいですが、それでも日照条件の悪い土地や積雪地帯には不向きなので、「日本の屋根をソーラーパネルで覆い尽くしたい!」など意気揚々と言われると、CO2減らしたい気持ちは理解できるものの、(わかってねえなぁ...)とこれまた呆れてしまいます。

4/30追記

環境省がやるべきは、省エネ的にもグリーン的にも減価償却資産の耐用年数が一体いつまで22年設定のままで、その時が来た途端無価値になってしまうんだ?ということに対してもっと懐疑的になってほしいんです。林業従事者、森を守るのに大変苦労されてますよ。せっかく施主が木を使いたいとかぬくもりが欲しいとかオーダーして得た資産が時間とともに無価値になるって馬鹿じゃない?ってことに敏感になるべきです。
川上から川下の産業まで俯瞰的に捉え、森林保全や林業従事者にとってもメリットが生まれるようなインセンティブを住宅建設の際に逆に付与してあげたり、最終的な消費者にとっても木造を長期所有することのメリット=資産価値が最大化するような施策を用意したり、社会の木造への認識転換を諮る方がずっと大事だと思います。

6月にも結論をまとめるとのことで、建設をご検討の皆様にとってもこの追加的コストを受容し得る予算計画かどうか、注目すべき内容ではないかと思います。

併せて「省エネは複雑系」もご参考ください。

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1141.改正省エネ法

maemi fuminori [Date 2021-3-15]

4月から始まります。

・300㎡未満は非住宅/住宅ともに「説明義務」に留まりますが、それ以上の計画には「届出義務」、「適合義務」が課せられますのでご注意ください(下図参照)。
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・300㎡未満の計画では建築士から提示される説明書と以下の説明リーフレットを用いて建築主への説明がなされます。図は住宅用のもので、非住宅では別様式があります。
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SDGsは従来の様々な物事への取り組みについての意識を変えてゆく内容で、建築も否応なく求められていきます。住宅のような小規模な建築でも機能性や快適性はもとより、我々作る人と使う人双方の意識を環境問題に向けていくことが求められます。

また、最近前景化し国際問題となっている「現代奴隷問題(奴隷労働、強制労働、児童労働、囚人労働、人身取引)」では、実は身近に使っていたものがそのような労働によって作られたものか否か、非常に国際的にシビアになっています。
建材や設備機器においても、製造企業側の現地確認や誠実なステートメントはクライアントに最も身近な我々設計者にとっても非常にデリケートなものです。

当事務所では設計過程における仕様選定において、十分各メーカーのステートメント等を確認しながら、クライアント様への提案・意思決定の透明化をお約束致します。

併せて「省エネは複雑系」もご参考ください。

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1088.トレーサビリティ(前編)

maemi fuminori [Date 2020-2-13]

向学のため農水省、国交省住宅生産課、SGEC/PEFCジャパンへヒアリング。林野庁は日を改めて尋ねる予定。

目的は
1) 一般木造住宅をもう一歩、環境配慮型の設計に向かわせるために、噛み合っていない諸制度の歯車を噛み合わせるため。
→環境配慮といっても、木を使えばなんでもいいのだろうか?

2) 噛み合っていない状態での安普請な木造住宅の設計請負は、消費者保護の観点と環境配慮の観点からもう少し慎重かつ視野を広げて扱う必要があると近年特に感じているため。
→木材利用促進は運用そのものは適切なのか?単に戦後植林された樹木がたまたま今使い時だからどんどん使え、そのための補助金メニューは用意してあるという話に終始していないだろうか?
 
逆に言えば、適切な材料品質・管理と第三者認証のもと供給される木材で建てたいという声が今後増えるのであれば、積極的に応えたい。

3) 民間木造建築において(公共建築物はグリーン購入法があり認証材の規定などがあるので割愛)、設計図書※で認証木材の利用を促進・指定したいと思い始め、そのような仕様書改定の動きがあるのか、省庁横断や認証機関との連携がどの程度なのか把握したかったため。
→現在連携はなし。必要性は感じている様子。

 ※設計段階では設計図書にある「特記仕様書」で材料品質を指定しますが、その細目は農水省の「JAS規格」に準ずる機械的等級がベースであり、「SGEC認証」のような持続可能な認証林から伐採され、「CoC認証」を受けた原木事業者や製材事業者によって加工された製材で建てなさいと指定できる項目は現時点でありません。
 あくまで構造的な視点でスペック定義を求めているのであって、環境的視点でスペックを取り扱う慣習が整っていないと思われるが、民間住宅の半数以上が木造である現実を踏まえると必要な視点ではないだろうか。

筆者はその雛形としての仕様書のほころび、一部形骸化に着目し、材料品質だけではなく、履歴を辿れる証明も併せて設計段階で適切に工務店へ伝達し、「履歴の見える建築」の建設を推進したいという思いから取り組み始めています。法人格の事務所なら当たり前に気づき取り組めそうなものですが、まだ少ないようです。そんな中で個人事務所がこういう視点で取り組もうとするのは良いことだと思いませんか?

SGECジャパンでもまだ五輪関連施設個人住宅などプロジェクト認証はあるものの実績は乏しいようです。それでも、

「設計事務所からのアプローチはとても少なく、必要と感じていたので大変心強いです」
とのお言葉も頂き、方向性として好感触でした。
行政も認証事業者も設計者の声を求めてる事が判明。

認証領域は別に建材に限ったものではなくパルプも対象なので、どちらかというと文具メーカーや製紙メーカーの方が多いようです。
ちなみに、CoC認証を得た認証材を扱っている材木店なども都道府県ごとのリストをご提供いただけそうなので今後、各地域の工務店との連携も一段としやすくなるのではないかと思います。

正直な話、
認証材でもっと洗練された木造住宅をご提供する自信があります。
チャンスを頂けるクライアント様、随時お待ちしております。

最後に、これは間違った認識を持っていただきたくないので断っておかないといけないのですが、

・SGEC認証/CoC認証を受けていない材料が「悪い品質の材料」では決して無い

ということです。

原則、材木は
JAS規格で検査・認定を受けているので「材料品質」は満たされています。
それに加えて、
SGEC認証/CoC認証を受けることで「どこの森から来た材料で建てられた建築なのかがわかる」
というレベルまで木造住宅を引き上げたい。

という二段構えで設計したいと考えています。

始まったばかりの取り組みなので学ぶことも多い分野です。
温かい目で見守っていただきたいと思いますが、
設計側で川上から川下まで意識的かつ連続的に捉えることで森林管理のやりがいや運営の向上も見込めるのではと期待を寄せています。

省エネは複雑系だったわけですが、やっぱり環境も複雑系。
一筋縄ではいかないし、想像力だけでは追いつけなくなるほど取り巻く社会状況は多様化していますね。

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1087.省エネは複雑系

maemi fuminori [Date 2020-2-08]

先週、「住宅省エネルギー技術者講習」を受講してきました。

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この講習会は2021年4月施行予定の改正建築物省エネ法にあわせての技術者トレーニングです。
設計者・施工者ともに施行までの1年間、習熟を図って行くというものです。
(住宅着工件数も減っているのに随分と駆け足だなあ)

今回の法改正のポイントは2つ。

・適合義務の対象拡大

・説明義務の創設

です。

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様々な配布テキスト。


・・・と、ここまでで何のこと?という方もおられると思いますので、アウトラインを補足します。

にわかに地球規模で「環境問題」が小さな環境活動家によってか否か、クローズアップされているようなメディアの印象もあれば、また大規模森林火災や熱中症増加、台風被害はじめ、実害の拡大もあって、「地球に何が起きているのか、温暖化は本当か?地球のサイクル上の成り行きではないのか?グローバル経済って本当にいいことなの?」などざわつきも感じます。

しかし、人為的な自然環境の悪化、特に運輸業や製造業、小売事業者やエネルギー供給事業者を中心とした企業体は規制対象者として定められ、省エネ努力や報告義務など課されています。
企業が率先して省エネに務めなければならないというのは、以前の東大安田講堂で行われたブループラネット賞受賞講演のコラム「安田講堂にて」でも書きました。

日本には、実はざわつく前から努力してきた歴史があります。
1973年と1979年の二度に渡りオイルショックに見舞われたことから、1979年に「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」、通称「省エネ法」が制定されました。以降、時代に合わせて改正を続け今日に至っている法律で、馴染みがあるのに馴染めない、わかっちゃいるけどわかりにくい。
それが省エネ法です。


そして、建築物についてもこれまで何度か改正があり、今回更に踏み込んで小規模建築物や供給する事業者の戸数や住宅形態(用途種別)へも規制拡大して適用しようというのが狙いのようです。

対象が拡大する中でキーワードは、延床面積「300㎡」。
以下に4つの大枠と矢印でその改正点をご紹介します。

・適合義務制度
従来、省エネ基準適合が義務化されていた規模:2000㎡以上
→ (住宅を除く)300㎡以上の建築物に拡大

・届出義務制度
省エネ計画の着工前届出(21日前):300㎡以上の住宅
→ 対象規模は変わらず
「住宅性能評価」や「BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)」等を取得することで21日から3日に短縮可能。
あわせて、不適合の場合の所管行政庁からの指示・命令等の実施強化

・住宅トップランナー制度
年150戸以上分譲戸建てを供給する事業者
→ 年300戸以上注文戸建を供給事業者、年1000戸以上賃貸アパートを供給事業者が追加。

そして、新たに追加されるのが

・説明義務制度
300㎡未満の住宅
→ 建築士から建築主に対して、省エネ基準への適否等の説明を義務付け
(戸建住宅や小規模店舗も対象)

以上です。

詳細については長くなりすぎるのでここでは触れませんが、

・日本は南北に長いので基準値の異なる8地域に分類して住宅の省エネ基準を決めましょう。

・「外皮性能」+「一次エネルギー消費量」の総和が基準値以下であることを計算で求めましょう。

というものです。

「外皮性能」というのは、屋根や外壁、窓などの断熱性能。熱貫流率が低いものを使うことで性能が向上します。特にサッシとガラス、断熱材の仕様をどのグレードにするかというのがコストとの兼ね合いもありますがより重要になってきます。なので、「いくらで建つの?」という類の抽象的なお問い合わせに苦心してしまうのです。
そして、アルミサッシはもうだめなんじゃないかな・・・樹脂との複合が当たり前だけど対処療法に過ぎないし、窓はアルミが普通なんて印象は日本くらいなもんなので、今後はより熱伝導率が低い木製サッシが基本であるべきでしょうね(こんなことは私が学生の頃から散々言われてることなんですが)。

「一次エネルギー消費量」は設備機器(エアコンや給湯器、照明器具)の高効率化で省エネを図るものです。
それに加えて「創エネ」といういわゆる太陽光発電をはじめ、蓄電池ユニットなどによる再生可能エネルギーで一次エネルギー消費量を相殺していく考えがZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)でそういう住宅を増やしていきましょうというのが国策としての方針です(これもなかなか増えませんが)。

仕組みも取り組みも一筋縄ではいかない、複雑なものですよね。もともと環境は複雑系なのです。

でも、
小さな環境の連鎖が地球のサイクルに適切に組み込まれ循環していかないと自然のメカニズムが狂うのも事実なので恩恵を受ける以上、必然ではないでしょうか。

私が生まれた1975年(昭和50年)、故郷の宮城は正しく東北地方って感じの気候でした。
冬は雪だるまもかまくらも作れるほどちゃんと雪が積もっていました。
当時の実家は木造在来工法の家でしたが、壁にグラスウールはあったと思いますが、床下が布基礎で土に曝されているような仕様で床冷えが酷く、暖房しても熱が逃げてしまう非効率な住まいでした。
母がよく寒い寒いと嘆いていたのを思い出します。
でも往々にしてそういう住宅建設が多かった時代だと思います。

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ご存知「ドラえもん」の野比家
今ほど一次エネルギー消費量は無いものの、断熱性能は良くない家が量産された時代

自動車は年々環境基準が厳しくなる中で、燃費の良い製品にバージョンアップするわけですが、それと同じように住宅の基本性能も向上するのは当たり前の流れです。
常識的な範疇で戸建住宅をご検討中の方々にも「運営者」としての責任が生まれるということを念頭においていただければと思います。

しかし、この小規模住宅への説明義務制度には但し書きがあります。

それは、
建築主が省エネ性能に関する説明を希望しない旨の意思を書面により表明した場合は、説明不要

現代は余程おかしな暮らし方を望まない限り、燃えにくい材料や冷めにくい断熱性能で標準的に住まいを持つことが可能です。むしろ、各建築士が常識的な範囲で設計し、それを購入しているのであれば著しく性能が低下することはありません。しかし、住まい手側が暮らし方を哲学的に再考した結果として、画一的な住宅の風景とは異なる建築を欲したとき、例えば、ガラス張りの住宅が欲しいとか、別に寒くてもいいんだとか夏を旨に作ってくれればいいとか、イレギュラーな要望もあるわけですね。
この但し書きというのは、そういう暮らし方の多様性にも一応はポーズを取っていますという意味だと捉えることもできると思います。

結局の所、今回の改正省エネ法は国交省、経産省的には断熱性能や動力・家電性能で省エネを求めるわけですが、認証木材について以前コラムで書きましたが、農水省的には森林認証と認証木材の普及拡大によって健全な森林保全と建設運用が求められるわけなので、「環境問題」における省エネ法というのはまだまだ三位一体改革にはなっていないし、運用がバラバラなので、設計者は混乱するし、建築主への説明もここまでアウトラインを示した上で、「環境としての住宅」について対話していかないと、まあ中途半端な制度設計になるでしょうし、仮に「断熱等性能等級4」の住宅で省エネ住宅なんだよって友人に自慢したとしても、じゃあそれ認証木材で作られてるの?とツッコまれたらちょっと赤っ恥をかいてしまう、そんな時代はすぐ目の前に来ているんだろうと思います。

でも、すべてをハイスペックにすればそれで良いのか?予算は有限です。資源も有限です。
みんなが高望みしたらエネルギー消費総量は爆発的に増えるのは目に見えています。
なのである意味滑稽な制度とも言えるわけですが、どちらかといえば、自律分散型の創エネを増やし暮らしを安定的にドライブさせていく必要のほうが数段重要です。
このことを頭の片隅に入れておく必要はあるだろうと考えます。

トヨタが実験都市で試みようとしているのはこの点にあります。基礎自治体の自律性がより必要になる中でどう持続可能な社会を作れるのか?これだけハードが整備尽くされた現代で改変が可能なのか?老朽建築物やスプロール化する街区を更新するには建築所有者へのインセンティブを与えない限り道路構造なんか絶対変わるはずもないし、街区整理などできはしないでしょう。自動運転や歩車分離、物資配送サービスのための整備技術や自給率を上げるための生産施設などを既存の街に実装することが困難ならば、公共施設投資を減らし大企業が街を作って段階的に誘導していくような抜本的な民間主導型の立地適正化なんてことも少しづつ増やす必要もある気がします。

2050年には人類は100億人を突破します。その頃日本は1億人を切ります。
私が後期高齢者になる頃です。
本来ならば、人口が減る分国内消費エネルギーも減ることを念頭に制度設計し直してもいいくらいですが、日本の政治家は保育所作って子育て支援すれば人口は回復・維持できるのではと、まだどこか夢を見ているように思います。

ここに政治哲学、企業哲学、暮らしの哲学が必要になるのだろうと思います。


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